横浜地方裁判所 昭和58年(わ)1909号 判決 1984年3月07日
本籍
神奈川県三浦市南下浦町昆沙門二、〇八七番地
住居
右同
定置網漁業兼農業
木村武勇
大正五年一〇月二七日生
本籍
神奈川県三浦市南下浦町昆沙門二、〇八七番地
住居
右同
定置網漁業兼農業手伝
木村常子
大正七年一二月二〇日生
右両名に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官漆原明夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人木村武勇を罰金三、三〇〇万円に、被告人木村常子を懲役一年六月に各処する。
被告人木村武勇において右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
被告人木村常子に対しこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人木村武勇は、神奈川県三浦市南下浦町昆沙門二、〇八七番地において定置網漁業及び農業を営むもの、被告人木村常子は、被告人木村武勇の妻で、同人の右業務の経理全般を統括しているものであるが、被告人木村常子は、被告人木村武勇の右業務に関し、同人の所得税を免れることを企て、漁業収入及び農業収入の一部を除外して簿外現金として蓄積するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和五五年分の実際の総所得金額が六六一六万三八二〇円で、これに対する所得税額が三三九八万四八〇〇円であるにもかかわらず、同五六年三月一三日、同県横須賀市上町三丁目一番地所在の所轄横須賀税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一四六六万九三四五円で、これに対する所得税額が二九五万九一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、所得税三一〇二万五七〇〇円を免れ
第二 昭和五六年分の実際の総所得金額が一億六八一三万三一六五円で、これに対する所得税額が九三〇一万九一〇〇円であるにもかかわらず、同五七年三月一三日、前記横須賀税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が四二五五万〇〇八五円で、これに対する所得税額が一三八一万七七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、所得税七九二〇万一四〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
一 被告人両名の当公判廷における各供述
一 被告人両名の検察官に対する各供述調書及び大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書二通及び脱税額計算書説明資料と題する書面
一 木村憲次郎及び井森義春の検察官に対する各供述調書
一 木村憲次郎、井森義春、杉野重男、福島啓二及び木村和一の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 井森義春作成の申述書
一 押収してある所得税の確定申告書二袋(昭和五九年押第一〇一号の1・2)中の確定申告書二通
(法令の適用)
被告人両名の判示第一の所為は昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条、二四四条一項に、判示第二の所為は改正後の同法二三八条、二四四条一項の各該当するので、被告人木村常子につき所定刑中懲役刑を選択し、以上はいづれも刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人木村武勇につき同法四八条二項により所定罰金の合算額の範囲内で同被告人を罰金三三〇〇万円に処し、被告人木村常子につき同法四七条本文、一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年六月に処し、被告人木村武勇において前記罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、被告人木村常子につき情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
以上のとおり判決する。
(裁判官 茅沼英一)